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Market Insights

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The End of Accounting:投資家にとって有用な指標とは

会計 ファイナンス

会計についての話をします。

 

MBAの名門であるニューヨーク大学スターンスクールの教授が、 The End of Accountingという本を書きました。この「会計の終わり」という刺激的な題名の本で著者は、従来の開示が投資家の判断に対してもたらす有用性が薄くなっていると主張しています。

英語の割と分厚い本ですが暇だったので読みました(飛ばし読みですが)

The End of Accounting and the Path Forward for Investors and Managers (Wiley Finance)

The End of Accounting and the Path Forward for Investors and Managers (Wiley Finance)

 

著者が挙げている例として、 ネットフリックスの売上が前期比15%増、購読者の伸び率は前期比15%減になったとします。株価は決算発表翌日に大幅下落しました。

売上高や利益といった指標を報告する従来の制度化された開示では、株価が決算発表を受けて上がるのか下がるのか投資家が判断することが困難になっています。

著者は、売上計上基準だけで700ページもの記述がある現状の米国会計基準は木偶の坊で意味が薄いため、財務会計基準審議会はこれの検討に作業量を割くのではなく、投資判断に有効なように会計基準を根本的に改革すべきだと主張します。具体的には、

 

・無形固定資産は今や企業の資産の中で最も重要である。無形固定資産を戦略的リソースとしてもっと詳細に開示すべき。例えばヘルスケア企業のパイプラインや、エネルギー企業の確認埋蔵量や、エンターテイメント企業や投資会社の有能なマネージャーなどなど。

・R&Dとひとかたまりにしているが、長期的な成果があるReserchと短期的な改善であるDevelopmentは全くの別物なので、どのような目的の投資なのか、より詳細に開示すべき。

キャッシュフローはフリーではなく資本コストがかかるので、資本コスト控除後の残余キャッシュフローも開示すべき。

等々といった改善案を挙げています。

 

私は筆者の考えに概ね同意します。

米国の一流企業の開示を見ていると、どこも筆者が挙げているような戦略的リソースについて投資家説明資料で公表していますが、一般的に決められた基準ではないため比較困難です。Non-GAAPGAAPの利益が全く異なる会社もあり(Twitterとか)実態を投資家が容易にわかるようにはなっていません。

 

また、この問題は米国に限ったことではありません。日本では無形固定資産に対する扱いが米国よりも粗雑だと思います。J-GAAPには無形固定資産の定義や認識要件についての包括的基準がありません。

 

資本コストを開示資料に含めることには議論の余地があります。資本コストをどのように算定するかには多くの恣意性があります。計算の前提となる負債や純資産は簿価ベースでしょうか、時価ベースでしょうか?どのように計算しても恣意性が入るのだから、開示資料には入れずに投資家が自分で計算すれば良いのでは、とも思います。

 

「会計の終わり」という挑戦的な題名ですが、内容は企業経営者や投資家に従来の開示の意義を問う、建設的な本でした。

 

おまけで、本の内容と少し関連しますが、僕が無意味だと思うファンダメンタル指標について。

PBR:資産の簿価は企業価値の実態を表してません。従って、PBRが何倍だから割高とかいうことには意味がありません。資産の簿価と時価がほぼ一致するのは現預金と売掛金、投資有価証券くらいのもので、それらは企業価値にとって一般的に重要な資産ではありません。

 

PSR:売上高は本質的に企業価値を表してません。殆ど同一のビジネスを行なっているならPSRを比較することに多少の意味がありますが、S&P500の平均PSRが過去最高だから米国株は割高だ、といった主張は完全に馬鹿げています。

 

あと、EBITDAは無意味ではありませんが使い方が難しい指標です。

EBITDAについてはちょっと詳細に書きたいことがあるので、次回にしたいと思います。