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Market Insights

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シーゲル流投資:エネルギー株の未来を考える

業界分析

先日、BP株を購入したことを報告しました(たった20万円ですが)。エネルギー株に投資するのは実は初めてです。

シーゲルは長期投資の対象とするべきいくつかの株の特徴を挙げています。いわゆるシーゲル銘柄です。シーゲル銘柄とは、高配当であり、長期的に配当再投資を行った場合に市場インデックスに対してアウトパフォームするような大型株、具体的には生活必需品、ヘルスケア、エネルギーセクターの優良株を意味しています。

 

シーゲルに習い、今からエネルギー株に投資するのは生活必需品やヘルスケアと違ったリスクを負うことになるように考えます。それは将来のエネルギー動向についての懸念といったマクロな問題です。

生活必需品についてはスイッチコストにより大きく業界の趨勢が変わる心配は少なく、また安定的にGDP成長率に比例した業界成長が期待できるでしょう。僕は今までもコカコーラが好きだったし、今後も死ぬまで好きだと言える確信があります。

またヘルスケアについては薬価引き下げの懸念、特許切れや無理がある買収(ヴァリアント・ファーマシューティカルズ!)などがありますが、業界全体はGDP成長率をアウトパフォームして成長していくことは間違いないと思われ、また今のところは特許切れ問題に対して米国企業はあの手この手でうまく立ち回っているようにおもわれます…例えばアボットはヒュミラの特許切れに関連したディスカウントからポートフォリオを守るためにアッヴィを分社化しましたね。

 

さて前置きが長くなりましたが本題のエネルギー株の話です。

エネルギーセクター(その中でもシーゲル銘柄は石油メジャーに偏っています)に投資するためには将来のエネルギー動向を頭に入れて置かなければなりません。石油というものは生活必需品やヘルスケアのようにGDP成長率に負けない業界ではなくて、原子力や太陽光、シェールガスやその他のエネルギー革命との競争によって業界がしぼむ可能性があります。

あるいは中東やロシア、ベネズエラやメキシコにおける、政治やテロリズムの問題、あるいはアマゾンの巨大飛空挺やドローンがもたらす物流革命…

考えればきりがないですが、(こういう思考停止に陥った時に限って僕は市場のセミストング・フォームを支持します。いたって便利な考え方ですね)

このような悲観的な観測に対して、エネルギー株への投資をどのように考えればよいでしょうか?

とりあえず、BPが2017年版のEnergy Outlookを発表したので、簡単に見てみましょう。

 

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地域ごとのエネルギー消費量の実績と見通しです。オイルショックリーマンショックの小さな谷を除いて増加しており、今後もインドや中国、新興国の経済成長により増加する予測です。ただし、1995年-2015年が2.2%の年次成長率だったのに対し、将来は1.3%の成長に低下すると見込まれています。

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今後の世界経済のGDP成長と一次エネルギー消費の成長です。

今までもエネルギー業界の成長はGDP成長を下回ってきましたが、今後は更に差が広がる見込みです。このギャップは主にエネルギー効率性の改善に起因します。

 

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一次エネルギー消費の内訳です。石油の比率は天然ガスや再生エネルギーの伸びにより低下しますが、2035年でも引き続き首位を占める見込みです(このグラフを作ったBPのアナリストが確証バイアスに囚われていなければ)

 

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エネルギーの消費要因ごとの内訳です。これまでは電力や産業用の伸びが中心でした。

今後はNon-Combusted、すなわち内燃機関用ではない、石油化学製品などの増加率が高い見込みです。(全体に占める割合は小さいですが)

 

さて、BPのEnergy Outlookは非常に興味深いですが、このくらいで引用をやめたいと思います。気になった人は続きを自分で見てください。

 

仮にBPの見通しが確証バイアスに基づいたものであったとしたら、本当の未来はもっと悲観的かもしれません:それでもわれわれはエネルギー株を買うべきでしょうか?

BPの見通しは保守的で、本当はエネルギーをジャラジャラ使って誰もが宇宙旅行に行く未来がやって来ると期待して?

 

僕の考えは、前者にはイエス、後者にはノーです。つまり、期待していないからエネルギー株を買うのです。

理論株価について考えてみましょう。

 

理論株価とは、ゴーイングコンサーンを仮定した場合、将来の配当を割引率で現在価値に置き直した数字の総和で計算されます。将来の配当を一定と置くと、現在の株価は、(株価) = (配当金)/(割引率)で近似されます。仮に将来の配当金を永久に100円/年、割引率を5%とすると理論株価は100/5%=2000円です。

 

さて、現在における配当利回りが魅力的な株は、なぜそのような株価に置かれているのでしょうか。

理論株価の定義を考えればわかりますが、それは将来における配当利回りの増加が小さく見積もられているからです。

エネルギー株について言えば、将来の増配期待が小さいから、現在の利回りが良いわけです。BPの配当利回り6%、エクソンモービル配当利回り3.5%は、企業がその利回りを将来にわたって維持できないか(減配懸念)、あるいは増益による増配期待が少ないことを意味しています。

 

しかし、株価と配当利回りがこのような状況にあることが、長期における配当再投資戦略が有効である理由でした。

 

シーゲルが挙げている例を引用します。

「貴方は今1950年にいます。IBMエクソン・モービル(当時はスタンダード石油という会社名)、どちらの株を買いますか?」

コンピューターやハイテク技術が殆ど存在していなかった1950年、IBMは成長株の代表であったでしょう。一方で石油会社は1950年でも既にオールド・エコノミーの代表でした。会社名からくるイメージだけでなく実際その後の55年間、利益成長率はIBMが10.75%に対してエクソン・モービルが7.75%と上回っています。どちらが成長株かというと、間違いなくIBMが成長株と言える状況でした。

しかしその後の55年間の株価の上昇率はどうだったでしょうか?IBMが年平均13.09%の上昇率となる中、エクソン・モービルは年平均14.46%の上昇率を記録しました(配当の再投資を前提)。前号でお示しした通り、たかが1.37%の違いですが、1950年にそれぞれ投資していた10万円は55年後に8149万円もの違いとなって表れてきます。何故、ピカピカの成長株であるIBMオールドエコノミー株であるエクソン・モービルに負けてしまったのでしょうか?

それはIBMの株価が常に割高であったからです。その55年間、IBMの株価収益率(PER)の平均はエクソンモービルの2倍以上で取引されていました。エクソン・モービルから分配される配当で、割安なエクソン・モービルに再投資できる事によって複利効果が生まれ、それがどんどんパフォーマンスを上昇させてきたのです。ちょうど株式版「兎と亀物語」とも呼ぶ事ができるでしょう。 

 

plaza.rakuten.co.jp

 

エネルギー業界の未来が悲観されているのは今に始まったことではありません。ニューエネルギーへの期待、石油枯渇への懸念は昔から常にありました。昭和の子供向け漫画には下記のような未来予測はありふれたものでした。

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もちろんここでは石油を燃やして発電するといったオールド・エコノミーの遺産は描かれていません。

そして今や、石油枯渇の懸念については油田検層技術の発展により(シュルンベルジェハリバートンなど)大きく減退しましたが、エネルギー効率性という堅実な相手がエネルギー業界を苦しめています。

そして昔からずっとエネルギー業界は、そのように思われていた通り、GDP成長率を下回って、低空飛行の成長を続けてきたのです。

 

エネルギー株への長期投資がハイテク株へのそれをアウトパフォームするのは、シーゲルが説明したように、そもそもの期待が低いためです。マジメな奴が普通に生きるより不良が更生したほうが褒められるのと同じです。業界の実績成長率は低くても、期待成長率も低く配当性向が高いため、再投資戦略が有効なのです。

 

したがって、今後もエネルギー株に投資することがシーゲル流投資の正解であるためには、成長期待が低いままであり続けるという条件が不可欠なわけです。

こうした議論を前提に置くと、オイル・エコノミーの将来に対する悲観はそれ自体、投資家にとって健全なものです。

 

という感じで、エネルギー業界の将来見通しと、将来への期待が株価に与える影響を概観しました。

次は、肝心のエネルギー業界の現況について書きたいのですが、ちょっと長くなってしまったので、現況分析についてはまた今度にしましょう。

 

追記:ブログのデザインを変更しました。今までのデザインはパステルカラーでどうもしっくりきてませんでした。僕はryoji ikedaなどのミニマルな世界観が好みです