Market Insights

長期投資を考えるブログ

10年間持っていたアマゾン株を売りました

Amazonティッカーシンボル:AMZN)の4Q決算は良くなかったです。

4Q単独では、売上高は15/4Q比22%増の437億ドル、営業利益は15/4Q比13%増の$13億ドル。AWSビジネスの営業利益は15/4Q比60%増の9億ドル。

 

ひどかったのは翌Qのガイダンスです。

17/1Qのガイダンスは、売上高は16/1Q比14%〜23%増と低調な伸び。営業利益は16/1Qの11億ドルに対して予想2.5億ドル〜9億ドルと減益予想でした。

 

クラウドコンピューティングの競争激化によるAWSビジネスの成長減速や、Netflixと映像配信分野で戦うためにコンテンツ制作費が上昇していることがあるのでしょう。

Netflixは営業キャッシュフローのマイナスが膨らんでも会員数増加が評価されるステージなのに対して、Amazonは売上と営業利益の両方をコントロールしないと評価されないステージにあります。ところがここまで図体が大きくなると、もはや営業利益を投資家が期待するペースで伸ばすことは困難です。PER192倍は正当化することが困難な数字です。

エコーやAmazon Go、ドローンによる配達など、Amazonの先駆性はGoogleを凌駕するレベルですので、将来への期待が高いことはわかるのですが、自前のコンテンツを拡充することによってプライム会員を増やす戦略では、投資の回収ステージに至るまでにまだ遠い時間がかかります。

コンテンツの制作費が増えることは分かっていたので、この決算はある程度想定できたたのですが、新値を追っている最中だったのでもう少し見極めたいと思っていました。Amazonが成長の罠の状態に入っている確信ができたので、持ち株を売ることにしました。

 

なぜか10年前にAmazon株を10株だけ買っていました。買値は58ドルでした。

10年前の2007年は、AmazonKindleサービスを開始した年です。ビジネスモデルに将来性を感じて、何も考えずに買ったのだと思います。

金曜日に売却した単価が806ドルなので、およそ13倍になりました。

f:id:yudet:20170204030120p:plainチャートを見ると2000年から2009年頃まで株価が停滞していたことがわかります。

10年で13倍になったので、IRRは30%です。(1.3^10=13.7)

なぜたった10株じゃなくてもっと買わなかったのか・・・と、昔の自分を殴りたい気持ちです。

実はだいぶ前のことですが、金融リテラシー不足によって何も考えずに取引をした結果、デイトレードで損失を出した経験があるので、Amazon株の収益を入れてもトータルリターンはマイナスなのです。いまや僕もある程度の知識を身につけたので、もう昔のような過ちをせずに、堅実に資産を増やして行きたい、と強く思います。

10年間持っていたアマゾン株を売りました

Amazonティッカーシンボル:AMZN)の4Q決算は良くなかったです。

4Q単独では、売上高は15/4Q比22%増の437億ドル、営業利益は15/4Q比13%増の$13億ドル。AWSビジネスの営業利益は15/4Q比60%増の9億ドル。

 

ひどかったのは翌Qのガイダンスです。

17/1Qのガイダンスは、売上高は16/1Q比14%〜23%増と低調な伸び。営業利益は16/1Qの11億ドルに対して予想2.5億ドル〜9億ドルと減益予想でした。

 

クラウドコンピューティングの競争激化によるAWSビジネスの成長減速や、Netflixと映像配信分野で戦うためにコンテンツ制作費が上昇していることがあるのでしょう。

Netflixは営業キャッシュフローのマイナスが膨らんでも会員数増加が評価されるステージなのに対して、Amazonは売上と営業利益の両方をコントロールしないと評価されないステージにあります。ところがここまで図体が大きくなると、もはや営業利益を投資家が期待するペースで伸ばすことは困難です。PER192倍は正当化することが困難な数字です。

エコーやAmazon Go、ドローンによる配達など、Amazonの先駆性はGoogleを凌駕するレベルですので、将来への期待が高いことはわかるのですが、自前のコンテンツを拡充することによってプライム会員を増やす戦略では、投資の回収ステージに至るまでにまだ遠い時間がかかります。

コンテンツの制作費が増えることは分かっていたので、この決算はある程度想定できたたのですが、新値を追っている最中だったのでもう少し見極めたいと思っていました。Amazonが成長の罠の状態に入っている確信ができたので、持ち株を売ることにしました。

 

なぜか10年前にAmazon株を10株だけ買っていました。買値は58ドルでした。

10年前の2007年は、AmazonKindleサービスを開始した年です。ビジネスモデルに将来性を感じて、何も考えずに買ったのだと思います。

金曜日に売却した単価が806ドルなので、およそ13倍になりました。

f:id:yudet:20170204030120p:plainチャートを見ると2000年から2009年頃まで株価が停滞していたことがわかります。

10年で13倍になったので、IRRは30%です。(1.3^10=13.7)

なぜたった10株じゃなくてもっと買わなかったのか・・・と、昔の自分を殴りたい気持ちです。

実はだいぶ前のことですが、金融リテラシー不足によって何も考えずに取引をした結果、デイトレードで損失を出した経験があるので、Amazon株の収益を入れてもトータルリターンはマイナスなのです。いまや僕もある程度の知識を身につけたので、もう昔のような過ちをせずに、堅実に資産を増やして行きたい、と強く思います。

思考実験:永久に配当しない会社の株価はいくらか?

前回の記事で理論に学ぼうと言った通り、今回は理論のお話。

 

理論株価とは、将来の配当(あるいは清算価値)を割引率で現在価値に置き直した数字の合計である、と前に書いた。

では、永久に配当しない会社の株価は、一体いくらになるだろうか?

 

配当を一切行わない会社は結構ある。収益を再投資し、今まで配当したことがないバークシャー・ハサウェイもその一つだ。

バークシャー・ハサウェイは、オマハの賢人、ウォーレン・バフェットが目の黒いうちは配当を行うことはないだろう。(あって欲しくないことだが)バフェットが亡くなれば?ひょっとしたら配当を行うようになるかもしれない。

f:id:yudet:20170131212750p:plain

ここでは、観念上の産物として、筆頭株主の方針として、どのような外圧が掛かっても、永久に配当を行わない会社を考えてみたい。仮に名前をバークシャー・ゾンビ社としよう。

この会社の純資産は100億ドル、1年に生み出すフリーキャッシュフローは投下資本に関わらず10億ドル、永久成長率は0%、割引率は5%とする。

バークシャー・ゾンビ社の株式の51%は筆頭株主であるバフェット・ゾンビ(以下、バフェット)が保有している。バフェットは死ぬことがない。彼の信念は、「決して配当を行わない」「会社は永久に存続する」「決して持ち株を手放さない」というものである。

バフェットを除く、全ての市場参加者は合理的な買い手であると仮定する。

 

今、株式の残りの49%が市場に放出されたとする。この株式はいくらで取引されるだろう?

ターミナルバリューの公式に当てはめれば、理論時価総額=10/0.05=200億ドル。

49%株式の価格は200*49%=98億ドルとなろう。

したがって、98億ドルで取引されると考えるのは正しいだろうか?

 

これは間違いである:なぜなら、バークシャー・ゾンビ社は永遠に配当を行うことがないからである。この計算は、フリーキャッシュフローが全て配当されると想定した場合には正しい。しかし、バークシャー・ゾンビ社はフリーキャッシュフローを配当することなく、未来永劫にわたって、純資産に積み上げていくだけである。

 

49%株式の全てをあなたが購入したとしても、株主総会であなたの配当提案は否決されるだろう。バフェットは非合理的なことに、議決権を行使し一切の配当支払の決議を拒否する。

全ての市場参加者は合理的であるとの仮定により、全ての市場参加者は、この会社の株を買ったとしても、未来永劫にわたって一円の配当も得られないことを理解している。

他の市場参加者に非合理的な価格で転売する(キャピタル・ゲイン)ことができないのだから、市場での取引価格はインカムゲインに一致する。すなわち、将来の配当の現在価値である。

それはゼロである。

したがって、この会社の49%の株式の価値はゼロであることが示された。

 

いくつかの反論がありうる。

【反論1】持分法適用会社にすれば会計上の利益が得られるので、バークシャー・ゾンビ社を20%以上保有したい会社が存在する。

したがって49%の株式の市場価値はゼロではない。

 

全ての市場参加者は合理的であるから、会計上のみの利益に踊らされる市場参加者はいない。したがって、バークシャー・ゾンビ社を持分法適用することは無意味である。

 

【反論2】バフェットは「永久に配当しない」信念を持っているが、これは非合理である。会社の利益は株主のものであるから、筆頭株主であるバフェットは自身の利益になるように会社の配当ポリシーを決めるだろう。

資金を再投資に回すことで会社が得られる追加的なフリーキャッシュフローの割引現在価値が、配当を実施することで代わりに行う利得(例えば他の会社への投資や、娯楽など)を上回る場合に限って、彼は配当を行わないことを決議するべきである。そうしないのは非合理である。

非合理な前提から、株式価値がゼロという非合理な結論を導出することは論理的に無意味である。

1=2と前提すれば、いかなる数学的結論をも導出できることと同じである。

 

その通り。この思考実験は論理的に無意味である。

しかし、あなたは指摘を忘れているが、非合理な前提は他にもある。「全ての市場参加者は合理的である」がそれである。

 

 

さて、バフェットは彼の3つの信念、「決して配当を行わない」「会社は永久に存続する」「決して持ち株を手放さない」のうち、「決して持ち株を手放さない」を放棄したとする。そうすると、どのような変化が起こるだろうか?

49%株式は今まで無価値であったが、追加の1%(正確には1%+1株)は重要である。

なぜなら、議決権で筆頭株主のバフェットを上回れば、株主総会で配当を決議できるからだ。

株式の50%+1株を全てあなたが持つ必要はない。市場参加者はバフェットを除いてみな合理的なので、バフェット以外の株主全てが配当決議に賛成するからである。バフェットを除く全ての株主の議決権の合計が、バフェットを上回れば良い。

ここにおいて、最初の計算が意味を帯びる。バークシャー・ゾンビ社の50%+1株の株式の市場価格は200*50%=100億ドルとちょっとになるはずである。

市場に株式価値が取り戻されたのだ。

 

最後に、応用問題を出しておきたい。

【問題1】

配当を永久に行わないバークシャー・ゾンビ社の例を、PERが非常に高く、営業キャッシュフローが赤字である、ネットフリックスのようなグロース銘柄と比較せよ。

 

【問題2】

配当を永久に行わないバークシャー・ゾンビ社の例を、PERが10倍以下と低く、キャッシュリッチであるにも関わらず株主還元を行わないバリュー銘柄(日本の小型株にいくらでもある。だいたいオーナー企業)と比較せよ。

思考実験:永久に配当しない会社の株価はいくらか?

前回の記事で理論に学ぼうと言った通り、今回は理論のお話。

 

理論株価とは、将来の配当(あるいは清算価値)を割引率で現在価値に置き直した数字の合計である、と前に書いた。

では、永久に配当しない会社の株価は、一体いくらになるだろうか?

 

配当を一切行わない会社は結構ある。収益を再投資し、今まで配当したことがないバークシャー・ハサウェイもその一つだ。

バークシャー・ハサウェイは、オマハの賢人、ウォーレン・バフェットが目の黒いうちは配当を行うことはないだろう。(あって欲しくないことだが)バフェットが亡くなれば?ひょっとしたら配当を行うようになるかもしれない。

f:id:yudet:20170131212750p:plain

ここでは、観念上の産物として、筆頭株主の方針として、どのような外圧が掛かっても、永久に配当を行わない会社を考えてみたい。仮に名前をバークシャー・ゾンビ社としよう。

この会社の純資産は100億ドル、1年に生み出すフリーキャッシュフローは投下資本に関わらず10億ドル、永久成長率は0%、割引率は5%とする。

バークシャー・ゾンビ社の株式の51%は筆頭株主であるバフェット・ゾンビ(以下、バフェット)が保有している。バフェットは死ぬことがない。彼の信念は、「決して配当を行わない」「会社は永久に存続する」「決して持ち株を手放さない」というものである。

バフェットを除く、全ての市場参加者は合理的な買い手であると仮定する。

 

今、株式の残りの49%が市場に放出されたとする。この株式はいくらで取引されるだろう?

ターミナルバリューの公式に当てはめれば、理論時価総額=10/0.05=200億ドル。

49%株式の価格は200*49%=98億ドルとなろう。

したがって、98億ドルで取引されると考えるのは正しいだろうか?

 

これは間違いである:なぜなら、バークシャー・ゾンビ社は永遠に配当を行うことがないからである。この計算は、フリーキャッシュフローが全て配当されると想定した場合には正しい。しかし、バークシャー・ゾンビ社はフリーキャッシュフローを配当することなく、未来永劫にわたって、純資産に積み上げていくだけである。

 

49%株式の全てをあなたが購入したとしても、株主総会であなたの配当提案は否決されるだろう。バフェットは非合理的なことに、議決権を行使し一切の配当支払の決議を拒否する。

全ての市場参加者は合理的であるとの仮定により、全ての市場参加者は、この会社の株を買ったとしても、未来永劫にわたって一円の配当も得られないことを理解している。

他の市場参加者に非合理的な価格で転売する(キャピタル・ゲイン)ことができないのだから、市場での取引価格はインカムゲインに一致する。すなわち、将来の配当の現在価値である。

それはゼロである。

したがって、この会社の49%の株式の価値はゼロであることが示された。

 

いくつかの反論がありうる。

【反論1】持分法適用会社にすれば会計上の利益が得られるので、バークシャー・ゾンビ社を20%以上保有したい会社が存在する。

したがって49%の株式の市場価値はゼロではない。

 

全ての市場参加者は合理的であるから、会計上のみの利益に踊らされる市場参加者はいない。したがって、バークシャー・ゾンビ社を持分法適用することは無意味である。

 

【反論2】バフェットは「永久に配当しない」信念を持っているが、これは非合理である。会社の利益は株主のものであるから、筆頭株主であるバフェットは自身の利益になるように会社の配当ポリシーを決めるだろう。

資金を再投資に回すことで会社が得られる追加的なフリーキャッシュフローの割引現在価値が、配当を実施することで代わりに行う利得(例えば他の会社への投資や、娯楽など)を上回る場合に限って、彼は配当を行わないことを決議するべきである。そうしないのは非合理である。

非合理な前提から、株式価値がゼロという非合理な結論を導出することは論理的に無意味である。

1=2と前提すれば、いかなる数学的結論をも導出できることと同じである。

 

その通り。この思考実験は論理的に無意味である。

しかし、あなたは指摘を忘れているが、非合理な前提は他にもある。「全ての市場参加者は合理的である」がそれである。

 

 

さて、バフェットは彼の3つの信念、「決して配当を行わない」「会社は永久に存続する」「決して持ち株を手放さない」のうち、「決して持ち株を手放さない」を放棄したとする。そうすると、どのような変化が起こるだろうか?

49%株式は今まで無価値であったが、追加の1%(正確には1%+1株)は重要である。

なぜなら、議決権で筆頭株主のバフェットを上回れば、株主総会で配当を決議できるからだ。

株式の50%+1株を全てあなたが持つ必要はない。市場参加者はバフェットを除いてみな合理的なので、バフェット以外の株主全てが配当決議に賛成するからである。バフェットを除く全ての株主の議決権の合計が、バフェットを上回れば良い。

ここにおいて、最初の計算が意味を帯びる。バークシャー・ゾンビ社の50%+1株の株式の市場価格は200*50%=100億ドルとちょっとになるはずである。

市場に株式価値が取り戻されたのだ。

 

最後に、応用問題を出しておきたい。

【問題1】

配当を永久に行わないバークシャー・ゾンビ社の例を、PERが非常に高く、営業キャッシュフローが赤字である、ネットフリックスのようなグロース銘柄と比較せよ。

 

【問題2】

配当を永久に行わないバークシャー・ゾンビ社の例を、PERが10倍以下と低く、キャッシュリッチであるにも関わらず株主還元を行わないバリュー銘柄(日本の小型株にいくらでもある。だいたいオーナー企業)と比較せよ。

恐怖指数が10年来の低水準

S&P500の恐怖指数(VIX)が先週、10.39と10年来の低水準をつけました。

今は少し戻して11.39です。注:書いている間に12.62まで上がりました。いいぞ!

f:id:yudet:20170130234851p:plain

 

恐怖指数とは市場のボラティリティを表した指数で、高いほど市場が乱高下すると思われていることを示します。具体的には取引されているオプション価格のプレミアムを元に計算されるようです。

一般に投資家は株価が下げている時にパニック売りを起こすためチャートは暴落しやすく、逆に株価の上昇局面では慎重に買い進めるためチャートはじわじわと上がります。

 

したがって恐怖指数が低水準というのは高値安定している局面と言えます。

実際、過去に恐怖指数が10ポイント台をつけた2007年1月や2014年7月は株価が上昇基調にありました。

 

では恐怖指数は低い方が良いのかというと、僕はそう思いません。ボラティリティが低い状態は投資家が慢心している状態です。アンカリング効果により少しの値下げで押し目買いを入れてしまいがちです。しかしトランプ政権の不透明な政策や金利上昇の観測を考えると、近い将来にボラティリティが高まる確度はかなり高いと思います。

足元の小康状態に慣れてしまうのは危険です。このような時こそ目先の値動きにとらわれず、理論に学ぶべきだと思います。

恐怖指数が10年来の低水準

S&P500の恐怖指数(VIX)が先週、10.39と10年来の低水準をつけました。

今は少し戻して11.39です。注:書いている間に12.62まで上がりました。いいぞ!

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恐怖指数とは市場のボラティリティを表した指数で、高いほど市場が乱高下すると思われていることを示します。具体的には取引されているオプション価格のプレミアムを元に計算されるようです。

一般に投資家は株価が下げている時にパニック売りを起こすためチャートは暴落しやすく、逆に株価の上昇局面では慎重に買い進めるためチャートはじわじわと上がります。

 

したがって恐怖指数が低水準というのは高値安定している局面と言えます。

実際、過去に恐怖指数が10ポイント台をつけた2007年1月や2014年7月は株価が上昇基調にありました。

 

では恐怖指数は低い方が良いのかというと、僕はそう思いません。ボラティリティが低い状態は投資家が慢心している状態です。アンカリング効果により少しの値下げで押し目買いを入れてしまいがちです。しかしトランプ政権の不透明な政策や金利上昇の観測を考えると、近い将来にボラティリティが高まる確度はかなり高いと思います。

足元の小康状態に慣れてしまうのは危険です。このような時こそ目先の値動きにとらわれず、理論に学ぶべきだと思います。

株式による不労所得は社会に価値を生んでいるのか?

結論から言うと、全く違います。思い上がってはいけない。

 

株式を保有することによってあなたは、企業が得た収益の一部を得ることができる。

例えばマクドナルドの時価総額は約10兆円なので、マクドナルド株を10万円買うことで、あなたはこの企業がハンバーガーを人々に売って得た収益の1億分の1を得る権利を持っている。

しかしそれはあなたが、ハンバーガーをグリルで焼いて、人々に手渡しているということではないし、どのような店舗設計を行い、広告戦略を打つかなどといった、経営に口を出しているということでもない。

 

あなたは単に、マクドナルドの収益に対して、所有比率に応じて分配を要求する権利を持っているだけである。

ここで、所有と経営の分離は明白である。

 

あなたが東芝の株式を持っていたとしても、不正会計に道義的責任を負わないのと同じように(もちろん株価の下落という形で金銭的責任は負うのだが)、あるいは電通の株式を持っていたとしても社員の過労自殺に対しての道義的責任を負わないのと同じように、あなたは事業が社会にもたらした価値について道義的に関わっているわけではない。単に金銭的に関わっているのだ。

 

ただし、ボードミーティングへの参加により、実質的に企業の経営に参与できる大株主については、事情は全く別である。彼ら/彼女らは、事業に対して道義的責任を負っている。事業に実質的に関わることがもたらす価値は、株式を大量に買い付ける際のプレミアムとして顕在化している。

 

保有する議決権に1億分の1やそこらのごくわずかの価値しかない株主がもたらしている社会的価値とは何か?それは市場に流動性を供給しているという事実である。

 

数十年前、ジョブズとウォズニアックがカリフォルニア州ロスアルトスのガレージでApple Iを自作しようとしていた時、彼らに資金提供を行い、代わりに株式を得た幸運な人々は、社会的な価値をもたらしていたと確かに言えるだろう。その資金提供がなければ、今のAppleはあり得なかっただろう。

しかし個人が優良企業の株式を市場から買い付ける行為には、流動性供給に対する貢献を除いて、社会的な価値はほとんどない。むしろ優良企業は事業によって生じた余剰な資金を使い、個人株主から株式を買い戻したがっている。21世紀の米国市場において、株式の最大の買い手は企業、最大の売り手は個人なのだから。

 

個人投資家の株式による不労所得に社会的価値を見出す行為は少なくとも誤りであり、更に言えば、個人投資家が社会的価値を生み出す行動をやめてしまう恐れがあるという意味で、有害でありうるだろう。